大台ケ原の調査視察を終えて

ビーグル号の航海日誌 2009年06月06日 22:46

IMGP6191.JPG昭和34年9月26日の伊勢湾台風(最低気圧:895hPa、最大風速75m)の襲来は、吉野熊野国立公園内に位置する東大台ケ原一帯のトウヒ、ウラジロモミの豊かな原生森を一夜にして壊滅させた。今回の視察目的は、その東大台は雨が多く植生回復がしやすい環境であるにもかかわらず、ミヤコザサ原にとどまっているのは何故かを調査するためである。現に同じく雨の多い屋久島の森林は、ヤクジカが生態系の頂点にいるのに豊かであるのとは対照的なのである。

IMGP6192.JPGIMGP6194.JPG植生回復が停滞しているのは、東大台一帯のニホンジカの分布は高密度になってしまっていることや観光登山によるキャパを超えた人為的な圧迫にあったことが上げられよう。後者については登山道の整備や入山規制区を設定するなどの対策により改善されている。

シカの高密度分布の背景は、そもそも、明治38年、天敵であるニホンオオカミが絶滅したこと、次に、戦後、化石燃料の普及により薪炭利用が消えるとともに、安価な原木の輸入が急増したことにより多くの二次林(植林)が放棄され、林床には日光が届かず下草が消えたこと、からシカが餌を求めて東大台一帯に移動し、数を増やしたと考えられる。

IMGP6199.JPG今日、他の国立公園・国定公園内の保護区やその他の禁猟区のほか、里山の民家近くまで出没するようになり樹木や作物に食害の問題を起こしている。東大台の荒地(ニッチ)には繁殖力旺盛なササが進出したが次の植生に遷移できないのは、シカが本木の双葉や若芽をすべて食べてしまうためであると推論できよう。

東大台を含む大台ヶ原一帯の豊かな森でもシカの食害から樹木を守り植生回復させるため、防鹿柵が設置されたり、樹幹周囲に金網が根元から地上1.5m程の高さまで巻かれたりしていた。天敵であるオオカミの代替はなく、被害を受ける側を保護する対症療法では限界があるように思われ、このままでは豊な自然、生態系を守ることはできないであろう。抜本的な解決策が求められていることを知る調査でもあった。

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