ムニンノボタン(無人野牡丹)の行く末から

ビーグル号の航海日誌 2013年01月05日 14:50

100507ムニンノボタン植林@初寝山途中.JPG100507ムニンノボタン植林A@初寝山途中.JPG小笠原諸島に自生するノボタン属は、北硫黄島にイオウノボタン、母島にハハジマノボタン、そして父島にムニンノボタンが知られそれぞれ固有種として、南硫黄島のノボタンのみは普通種とされています。清水善和先生によるとノボタン、イオウノボタンは山腹の雲霧帯、ハハジマノボタンは主稜線の雲霧帯に生育することから、小笠原諸島のノボタンの生育地は雲霧帯との結びつきが強く示唆されるといいます。乾燥化が進んでいる父島に生育するムニンノボタンにとっては行く末が危ぶまれます。父島初寝山山腹のムニンノボタン「最後の1株」はシマイスノキ乾性低木林内の半日陰で水条件の良い場所にかろうじて生育していたが、乾燥の厳しかった1995年に枯死し、島の東斜面にわずかに自生するほか、保護植栽が進められています。[2010年5月7日撮影:小笠原エコツアー「ケータ島沖(聟島列島)と小笠原固有植物の森をめぐる旅」@山崎]

100507ムニンノボタン最後の1本後(水と光と草)@初寝山途中.JPGムニンノボタン(無人野牡丹、学名:Melastoma tetranerum Hayata)はフトモモ目ノボタン科ノボタン属の常緑小低木。父島固有種で絶滅危惧TA類(CR)。湿潤時代の依存種とも。分布は父島に限り(戦前は兄島にも)、島東斜面のリュウキュウマツ-ムニンヒメツバキの疎林内などにわずかに自生。樹高は0.7mから1mほど、若株では全株を褐毛が被い、特に若枝、花柄、萼には剛毛が生えます。葉は対生し葉身3pから6pほどの長楕円形で全縁、葉先は尖ります。葉表は緑色、葉裏は黄緑色、3本の葉脈が目立ちます。花期は8月から9月頃、枝先の葉腋に径約3pの白色の4弁花を数個咲かせます。雄蕊4本。群落の中には淡桃色で5弁の花を咲かせるものもあり、ハハジマノボタンに近いようにも感ぜられます。果実は径約1pの球形の液果で秋に熟すと開裂し芥子粒状の黒い種子がたくさん入っています。実は鳥散布だそうです。

ムニンノボタンの保護増殖活動については、小石川植物園が早くから取り組んできており、一定の成果を上げています。頭の下がる地道な研究活動に裏付けられた素晴らしい成果と評価されます。小笠原諸島のノボタン2種2変種の起源は台湾に自生するノボタンと考えられ、小笠原諸島の各島嶼の北上、地球規模の気候変動(氷河期から間氷期へ)による海面上昇とそれに伴う島嶼の面積縮小化・低標高化により、降水・雲霧発生条件などの水分条件が劇的に変化する中でゆっくりと環境適応してきて現在があるです。私たちが学ぶことも多いです。


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シマムラサキ(島紫)は固有種三兄弟

070613シマムラサキ@エコカフェ(小石川植物園).jpgこれまでにオオバシマムラサキウラジロコムラサキを紹介しました。ここではムラサキシキブ属の小笠原固有種三兄弟の最後、シマムラサキを紹介します。小石川植物園で保護飼育。シマムラサキの仲間は、同一の種、おそらくは偶然に島に辿り着いた本土系のムラサキシキブが、絶海の孤島としての極度の乾燥、風衝、雲霧など特異な環境に適応したことが三兄弟を生んだのだと考えられます。[2007年6月13日撮影:小石川植物園における小笠原関係の調査@山崎]

シマムラサキ(島紫、学名:Callicarpa glabra Koidz.)はクマツヅラ科ムラサキシキブ属の常緑低木。小笠原固有種で絶滅危惧TA類(CR)分布父島、兄島に限り、林内部のやや湿潤な場所に自生樹高は2mから3mほど、葉は対生し有柄、葉身5cmから10cmほどの長楕円形で鋸歯があり葉先は尖ります。オオバシマムラサキに比べて細長く小さいのが特徴です若葉や葉柄には白い毛が生えるが、成長とともに脱落します。葉裏には腺点が密につきます。花期は5月から6月頃、雌雄異株、葉腋から集散花序をだし、淡桃紫色の小花をたくさん咲かせます。小花は筒状で花冠が4裂。雄花は雄蕊4本が長く雌蕊花柱が短く子房が不稔、雌花は雌蕊が雄蕊と同じくらい長く雌蕊花粉は発芽力がありません。果実は径約3、4mmの球形の核果で秋に濃紫色に熟します。

やはりオオバムラサキシキブが基本進化形であって、ウラジロコムラサキとシマムラサキは乾燥の厳しい場所とやや湿潤な場所といった具合に棲み分けをしていることからも時間軸の上では後から適応放散していったと考えるべきなのではないでしょうか。

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